今ある心を変えるには体を動かすしかない
現代医学が遺伝子レベルで発展を遂げてもなお、ダイエットの特効薬すら作れないのは、最先端の科学で持ってしても痩せることは究極の難問なのです。なぜなら、一般的にダイエットは食事制限と運動とよく言われますが、それよりも上位に位置しているのが人の「心」であるからです。
私たちは今、目の前にある現実がすべてだと思い込んでいます。勝手に自分の心に歯止めをかけてしまっているのです。ダイエットは、現状の暮らしの外側にある未来の輝く自分をリアルに、そしてクリエイティブにイメージすることがなにより大切なのです。しかし、ネガティブな感情に支配されていたり、過度なストレスを抱えていたり、現状の自分に押し留めようとする他者からの圧力がかかった意識の状態では、それをイメージすることはできません。
人が生きていることは、祖先からの魂の継続であるとすれば、自分のネガティブな感情もカルマが影響していることも実際にあるのです。それが意識のうえでの邪気(脳のクセ)となって心の中に留まっている限り、痩せることはおろか、いずれ深刻な病を引き起こす原因になるのです。こういった意識の浄化には自力と他力による改善策がありますが、自らが体を動かすことで邪気を祓うことができるのが、古くから太極拳などの中国武術で行われてきた「東洋式体操」というものです。
<調身>は全身リラックスして立つ
実際に東洋式体操を練習するうえで心がけなくてはならないのは、三調技術と言われる「調身・調息・調心」です。この3つのテクニックがどれも欠けることなく、一体として調和することによって、体の内なる気が鍛えられることになります。東洋式体操の第1歩になる「調身」は、偏りのない自然な姿勢で正しい動作を行うことです。たんに背筋を伸ばして筋肉を緩めればすむというわけではなく、目や口、脳や内臓の中まで全身が完全にリラックスした状態に持ってゆくことで、気血を整え経絡の流れをよくすることができます。調身を行う体勢には、「横たわる、座る、立つ、歩く」の4つのパターンがあります。
<調息>は逆腹式呼吸をマスターする
人が怒ったりパニックを起こしたときに、深呼吸をすると落ち着くことがあります。あるいは、自然の中で深呼吸をすると、空気が美味しいと感じることもあるでしょう。呼吸は自律神経をコントロールする機能を持っていて、東洋式体操の「調息」も意識的に呼吸の量や長さを変えることで、荒々しくなった心の状態を改善したり、内臓の働きを調整できたりします。
「長く吸って短く吐く」と交感神経系が興奮し心拍数を上げ、「長く吐いて短く吸う」と副交感神経系が興奮を抑え、心拍数を遅くすることができます。息をする器官は、「口から吸って口から吐く」、「鼻から吸って口から吐く」、ヨガなどで行われている「鼻から吸って鼻から吐く」などがあります。東洋式体操の入門者は「逆腹式呼吸」をマスターするところから始めるのがいいでしょう。
<調心>は頭の中を空っぽにする
心を調えることが「調心」ですが、まずは「放鬆(ほうしょう)、意念、入静」という言葉を覚えてください。「放鬆」とは調身や調息を行うことでリラックスすることです。しかし、心の中では怒り、嫉妬、心配、不平不満、欲望といった雑念が炭酸の泡のように浮かび上がり、普段は深層意識に隠されている思いまでもが集中力を阻んできます。東洋式体操における意識とは、正確には「意念」といったほうが正しく、意念をお腹の下丹田に置くことで頭の中を空っぽにした状態に持ってゆくのが「入静」になります。
完全に心が静まり返り頭が冴えると体の内なる気の存在を感じ、それを意念でコントロールすることができるようになります。東洋式体操には「三層九歩」という意識体としての発展段階があり、最終的に無念無想の境地に達すると言われています。道のりは長そうですが、東洋式体操をする環境や場所を変えてみたり、耳栓をして雑音を遮断してみたりと、入静状態に入るにはちょっとした工夫でなんとかなるものです。