太る意味を考える

あらゆる現象は「気」の働きによるもの

道教の荘子は気についてこう考えました。「気聚則生 気散則死」(気が聚まれば則ち生、気が散ずれば則ち死)であり、物理学的に言えば一種の物質であり、哲学的に言えば世界のすべてを構成するものとなります。私は次のように考えています。「気とは万物の根源であり、種にとっての生命エネルギーである。気は肉体と精神の働きによって運動し、体の経絡を流れている」ということになります。

私たちがこの世に生を受けたとき、母親から受け継いだ生命エネルギーが「先天の気」であり、これが枯れ果てると死を迎えます。一方で、生命活動に必要なエネルギーは、自然界の太陽や空気、食物から得ることができますが、これを「後天の気」と言います。

そして、東洋医学では陰陽における陽が「正気」、陰が「邪気」と区別されます。体に正気が満ちあふれていれば“元気”ということであり、その正気が減って邪気の侵攻を受けると“病気”を引き起こすことになります。

心身にヒビ割れを起こすと食欲が暴走する

母親から受け継いだ生命エネルギーが「先天の気」です。これは生まれたときから絶対量が決まっていますが、生きてゆく中で食物などから得ることができる生命活動に必要なエネルギーが「後天の気」ということになります。例えば、金魚鉢に先天の気という水がもとから半分入っていたとしましょう。後天の気は後から注ぎ足すイメージになります。金魚鉢がヒビ割れを起こして水が減ってゆけば、金魚は自由に泳げないばかりか、呼吸もしづらくなって息苦しくなります。

こういった生命の危機に迫るような状況を金魚が察知したとき、先天の気では増やすことができないので、後天の気によって不足しているぶんを補おうとします。実はこれが私の考える人が太るメカニズムなのです。体のどこかに、あるいは、心のどこかにヒビ割れを起こしているからこそ、食欲が暴走することになるのです。

後天の気の過剰摂取は生活習慣病を引き起こす

私たちは空気中の酸素を吸い、体内の諸器官を通って二酸化炭素を吐き出しています。空気中に戻った二酸化炭素は植物が吸収し、太陽の光のエネルギーによって光合成が行われ、タンパク質や脂肪、糖分やデンプンが作らてれます。その過程において水が分解されることで酸素が放出されることなり、これらの自然界のサイクルから生み出されたものが後天の気ということです。

後天の気は別名を「水穀の気」とも呼ばれ、食べ物や飲み物のことを指しますが、東洋医学では五臓における「脾(ひ)」に蓄えられ、全身の各組織に栄養を供給すると考えられています。脾が分かりづらければ、西洋医学でいう胃腸や消化器のような機能を持ったものと考えてください。つまり、なんらかの心身の異常があって過食に走ると、それが限度を超えれば脾の機能が麻痺し、肥満や糖尿病などの生活習慣病を引き起こすことになるのです。

生命の危機を感じるからこそ大量に食べる

私が東洋医学の理論の中で、人が太るメカニズムについて気づいたきっかけは、「死期が近い人ほど食欲が増す」という古来の言い伝えからです。人の寿命は、先天の気によってあらかじめ決まっているとして、それが蓄えられているのが五臓における「腎(じん)」になります。老化における体調不良は、腎の気が枯渇しているという意味で、東洋医学では「腎虚(じんきょ)」という言い方をします。

人は死期を悟ることができるとすれば、先天の気が失いかけていると、後天の気を補って生命力を回復させようとします。なので、食欲もなく病気で寝込んでいた人であっても、ある日、突然に猛烈な勢いで食べだすという奇妙なことが起こるのです。人が太るということも、これとまったく同じ現象であり、人が本能的に先天の気が脅かされていると感じたときにこそ食欲が増すのです。女性の産後太りも、もともと自分にあった先天の気を赤ちゃんに分け与えたぶんの気を外から補充しなければならず、その結果、高カロリーな食事を摂ることになるのです。

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