人の体は「気・血・水」が絶え間なく巡っている
私たちは風邪をひいたときに「葛根湯」を飲みますが、なぜ効くのかといえば西洋医学とは異なる東洋医学独自の理論があるのです。東洋医学では、私たちの体は「気・血・水(津液)」が循環することで生命活動を維持していると考えられていて、そのバランスが崩れると病気を引き起こすということになります。「気」は生命エネルギーであり、「血」は血液のことで、「水」はリンパ液や唾液、汗や尿など血液以外の体液全般のことを指します。例えば、体が浮腫んだり、口が乾いたりすれば、3つの要素のうちの水に問題があるということであり、「水滞」または「水毒」の症状として見ることができます。
五臓における「肝・心・碑・肺・腎」とはなにか?
東洋医学は「陰陽五行」という自然哲学が軸になっています。酒豪がお酒を飲み干したときに、「五臓六腑(ごぞうろっぷ)に染みわたる」という表現をしますが、その五臓とは漢方における「肝・心・脾・肺・腎」のことです。しかし、臓器そのものを指すだけではなく、体の働きを促すエネルギーが蓄えられている場所としての意味合いがあり、人の感情も司っています。東洋医学では病気の原因が五臓のどこにあるのかを見定めて漢方薬を処方します。
人の感情が病気を生み、気の異常を引き起こす
東洋医学では「七情」といって「怒、喜、思、憂、悲、恐、驚」という人の感情も病気の原因を探る手がかりになります。例えば、全身の倦怠感が強く元気がなければ気の不足であり「気虚」ということになります。喉や胸がつかえた感じがして腹が張り、気分が落ち込んでいれば「気鬱」であり、のぼせ気味であり足が冷えているようなら「気逆」という見方をします。西洋医学では心の病には精神安定剤やSSRIを処方しますが、東洋医学ではまず五臓における「肝」の不調を疑います。
イライラしたり気分の落ち込みが激しい人は「肝気鬱結(かんきうっけつ)」の症状であり、肝が精神的なストレスによって血の巡りが悪くなると「瘀血(おけつ)」となり、気が滞ると書いて「気帯」という気の異常を引き起こすのです。そんなとき漢方では、弱った肝の血を補う芍薬(しゃくやく)や気の巡りを改善させる柴胡(さいこ)などの生薬を使います。「柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)はよく使われる漢方薬です。
見ることも物体としても存在しないネットワーク
人の体は血管や神経が各臓器とネットワークを構築して動いています。レントゲン撮影をすれば、それらが見えるかたちで認識できるし、解剖すれば物体として取り出せます。しかし、人の体には見ることも物体としても存在しない別のネットワークがあり、それが東洋医学でいう経絡(けいらく)なのです。鍼灸は経絡上にある径穴(けいけつ)というツボに、針を刺したりお灸をすることで体調不良を改善させますが、いわば経絡はエネルギールートであり、径穴がエネルギースポットということになります。
体の真ん中を通っているエネルギールートが正中線になります。腹側が「任脈(にんみゃく)」、背側が「督脈(とくみゃく)」になります。体全体のイメージとしては、任脈督脈のルートが樹木の幹だとして、経穴はそれに繋がる枝として考えれば分かりやすいでしょう。
気を感じるエネルギーセンサーになるのが「下丹田、中丹田、上丹田」になります。脳に匹敵する機能を持つのが下丹田(臍下丹田)であり、お臍から6~8cm下あたりに位置しています。中丹田は両乳の中央から9cm奥にあって人の心を司り、上丹田は眉間から9cm奥にあり、いわゆる松果体とリンクしている「第3の眼」といわれる場所で、人の持っている潜在能力の司令塔としての役割があります。